カラスの巣を見つけても、すぐに棒で落としたり、はしごを掛けたりしないでください。卵やヒナがいない空の巣材を取り除く行為は、鳥獣保護管理法が禁止する捕獲や卵の採取には当たりません。一方、卵・ヒナがいる巣を許可なく撤去すると、法律に抵触するおそれがあります。
最初に整理するのは「巣の中身」「巣がある場所」「作業の高さ」の3点です。地上や室内など安全な位置から観察し、住所、巣の高さ、カラスの出入り、威嚇の有無を記録します。中身を確認するために巣へ近づく必要はありません。
中身が分からない、高所にある、電柱や電線に接している、親鳥が鳴きながら接近してくる場合は、自分で撤去せず管理者や自治体の担当窓口へ連絡しましょう。以下では、違法になる境界と場所別の連絡先を順に確認します。
カラスの巣を自分で撤去できるかは『中身・場所・高さ』で判断
自分で対応できる可能性があるのは、卵・ヒナがいないことを安全な位置から確認でき、管理権限があり、地上から無理なく届く場合に限られます。判断に迷うときは、次の表で「先に連絡する相手」を確認してください。
| 状況 | 自分で撤去 | 先に連絡する相手 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 卵・ヒナが見える、いる可能性が高い | しない | 自治体の鳥獣・環境担当と管理者 | 許可が必要になる場合がある |
| 巣の中身が分からない | しない | 自治体の鳥獣・環境担当と管理者 | 卵・ヒナを見落とすおそれがある |
| 空の巣で、自分の管理場所にあり、地上から届く | 条件付き | 必要に応じて自治体 | 管理権限と地域の案内も確認する |
| 街路樹・公園・公共施設にある | しない | 道路・施設の管理者 | 自分に管理権限がない |
| 電柱・電線・通信設備にある | しない | 電力会社・通信会社 | 感電・停電・転落の危険がある |
空の巣であっても、他人の敷地や共同住宅の共用部、公共設備にあるものを勝手に撤去してよいわけではありません。法律上の「巣の中身」と、施設管理上の「場所」、作業上の「高さ」を分けて考えることが大切です。

卵・ヒナがいる巣を無許可で撤去すると違法になる
空の巣材だけなら法律の禁止対象ではない
鳥獣保護管理法が原則として禁止しているのは、野生鳥獣の捕獲や殺傷、鳥類の卵の採取・損傷です。繁殖が終わり、卵もヒナもいない空の巣材そのものを片付ける行為は、この禁止対象には含まれません。
ただし、空に見えても内部が死角になっていることがあります。地上から中身を判断できなければ「空の巣」と決めつけないで、自治体の担当窓口や土地・施設の管理者へ相談してください。
卵・ヒナがいれば捕獲や採取の許可が関係する
巣に卵がある状態で巣を落とせば、卵を採取または損傷することになります。ヒナがいる巣を撤去すれば、ヒナの捕獲や殺傷につながる可能性があります。生活被害がある場合でも、自己判断で行わず、自治体に許可の要否と手続きを確認しましょう。
許可の窓口や必要書類、捕獲後の扱いは地域や状況によって異なります。業者へ依頼する場合も、卵・ヒナがいる可能性を伝え、必要な許可や自治体との調整を誰が行うのか確認してください。
違反すると拘禁刑または罰金の対象になり得る
鳥獣保護管理法の規定に違反して鳥獣を捕獲・殺傷したり、鳥類の卵を採取・損傷したりした場合は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になり得ます。巣を落とすだけのつもりでも、卵やヒナを巻き込めば同じ問題が生じます。
自分で確認できる範囲と近づかない条件
確認は、普段の生活動線にある安全な場所から見える範囲だけにします。親鳥の出入り、巣に長くとどまる様子、ヒナの鳴き声、見える範囲の卵やヒナは判断材料になりますが、いないことの証明にはなりません。
- はしごを掛けたり、木や屋根へ登ったりして中をのぞく
- 巣、卵、ヒナを棒や手で動かす
- 親鳥が威嚇しているのに巣へ近づく
- 電柱、電線、通信線の近くに触れる
親鳥が大声で鳴く、頭上を低く飛ぶ、後方から接近する場合は、巣から距離を取り、帽子や傘で頭部を守りながら静かに離れます。落ちているヒナも素手で拾わず、車道など危険な場所にいる場合は道路管理者や自治体へ連絡してください。
カラスの巣の場所ごとの連絡先
巣がある場所を管理している相手へ連絡するのが基本です。自分の敷地、共同住宅、公共の場所、電柱では連絡先が変わります。
戸建てなど自分の敷地
まず所有者や管理者として対応できる場所か確認します。卵・ヒナの有無が分からない場合は、市区町村の鳥獣・環境担当へ相談してください。高所作業になるなら、自分で行わず、カラスの巣に対応できる専門業者へ切り替えます。
賃貸住宅・マンション
入居者が勝手に撤去せず、管理会社、大家、管理組合へ連絡します。ベランダなど専用使用部分でも、外壁や樹木、共用設備が関係することがあるためです。部屋番号、見える位置、出入りの様子を伝えると確認が進みやすくなります。
街路樹・公園・公共施設
街路樹なら道路管理者、公園なら公園管理事務所、学校や庁舎なら各施設の管理者へ知らせます。巣があるだけで必ず撤去されるとは限りません。通行への支障や威嚇、落下物など、困っている状況を具体的に伝えてください。
電柱・電線・通信設備
電柱や電線の巣には金属製ハンガーや枝が含まれ、設備に接触すると停電などの原因になることがあります。地上から電柱番号、住所、目印を記録し、電力会社または通信会社へ連絡します。設備の種類が分からなければ、まず自治体や道路管理者へ場所を伝えましょう。
自治体や管理者へ連絡する前に記録する5項目
連絡前に次の情報をまとめると、担当部署や対応の優先度を判断してもらいやすくなります。分からない項目は無理に調べず、「不明」と伝えて問題ありません。
- 住所・位置:建物名、道路名、近くの目印、電柱番号
- 巣の高さ:何階付近か、地上から見上げたおおよその高さ
- カラスの出入り:親鳥が巣へ運んでいる物や出入りの頻度
- 威嚇の有無:低空飛行、鳴き声、接近を受けた場所と時間
- 写真:地上など安全な位置から撮れる場合だけ用意する

写真のためにはしごへ登ったり、車道へ出たりする必要はありません。卵・ヒナの有無を確認できないときも、そのまま「中身は不明」と伝えれば、担当者が次の確認方法を案内できます。
高所の巣は専門対応へ切り替える
はしごが必要なら、自分では撤去しないと決めてください。厚生労働省の安全資料でも、はしごを使う前に作業自体を避けられないか検討し、より安全な足場や高所作業車などを選ぶ考え方が示されています。
業者へ相談するときは、次の点を見積もりで確認します。
- 作業方法と、足場・高所作業車など高さに応じた設備
- 通行人や建物を含む安全対策
- 卵・ヒナがいた場合の許可確認や自治体との調整
- 巣材の撤去、周辺の清掃、再発防止の範囲
- 総額と、現場状況によって追加される費用
カラスの巣を見つけたら中身・場所・高さを整理する
空の巣材だけなら撤去自体は鳥獣保護管理法の禁止対象ではありませんが、卵・ヒナがいれば許可なく撤去できません。中身が見えない場合も、空の巣と決めつけず相談するのが確実です。
高所、公共の場所、共同住宅、電柱・電線では自分で手を出さず、管理者や設備会社へ連絡してください。安全な位置から分かる情報だけを記録し、自治体や管理者へ伝えれば、法律と安全の両面から次の対応を判断できます。

